チタン棒電解による常温核融合の実験



  簡単すぎる実験ではあるが、一応、放射線量を測りながらチタン棒(φ10mm)炭酸カリウム水溶液(1N=7g K2CO3 / 100ml 脱イオン水)中で電解する実験を試みた。
  炭酸カリウム水溶液で行う理由は、陰極(−極)において、
          39(93.26%、n=20個 + p → 40Ca + γ  の反応を 期待してのことである。
      ( cf. 40(0.012%、=21個) → 40Ca + β + γ (1.311eV) の反応は遅い(1.25×109年)ので弱い)


  1. DC電源による電解:   電子工作1.のDC電源使用


  陰極にチタン棒、陽極には 白金メッキしたチタン棒(チタンのままだと、電解酸化して5〜10分で通電しなくなる。(参照)(2)チタン棒の白金メッキ)を用い、DC電源(11V、2.5A)で電気分解し、水素が集まる(先に カリウムイオンが集まる)陰極近くに ガイガー管(LND712 ・・・ 雲母窓により α線も測定できるが、防滴のためアルミ箔で覆い ビーカー越しなので、γ線が出ていればカウントする)を置いて放射線を測定した。(測定器は、ストロベリーリナックスの”USBガイガーカウンター・キット”を使用)

  ・ DC電源 ・・・ 11V、2.5A   溶液への浸漬長 ・・・ 陽極:5cm、陰極:2.5cm  極間距離(芯間):3cm
  ・ 液の温度 ・・・ 17℃ → 53℃
  ・ B.G.(バックグラウンド) と DC電解 とを 1分 × 5回 ずつ交互に繰り返して、1分毎のカウント数の5回平均(= CPM)を測定する

 

  (結果)

  カウント数/1分 の各5回平均値(CPM): トータルで正味50分測定

1回目 2回目 3回目 4回目 5回目
 B.G.  (20+13+17+27+27)/5=18   17   19   20   23
 DC電解    20   18   21   21   21


  ・ チタン棒(陰極(−))の色は(おそらく水素化物により)褐色。 しかし、放射線量には有意差は見られない




  2. トライアック整流電源による電解:  電子工作14.の4の トライアック・コントローラー使用


  次に、同様の条件で、トライアック制御出力をブリッジで整流(50Hzの全波整流だから 100Hz)し、電解時の尖頭電圧が 60Vにもなる電流で電解した。(これでもVRはかなり絞っている。 測定は、100k−(10k+1kΩ)の抵抗分割で1/10としてオシロで)
  このとき、ビーカーで うなり音発生しているので、カリウムイオンが激しく陰極に衝突しているはずである。
  トライアックは少し発熱。ブリッジ(400V25A)はかなり熱くなった。

  ・ 平均電流 ・・・ 2A、  平均電圧(見かけ上 by. テスター) ・・・ 7〜8V
  ・ 液の温度 ・・・ 82℃〜94℃ (これ以上電圧を上げると沸騰する)
  ・ B.G.(バックグラウンド) と トライアック電解 とを 1分 × 5回 ずつ交互に繰り返して、1分毎のカウント数の5回平均(= CPM)を測定する

 
  (結果)

  カウント数/1分 の各5回平均値(CPM): トータルで正味50分測定

1回目 2回目 3回目 4回目 5回目
  B.G.    21   19   20   21   16
トライアック電解   19   18   20   21   17


  ・ チタン棒(ー極:陰極)の色は(おそらく水素化物により褐色)、しかし、放射線量には有意差は見られない
  ・ 電解後の液は、陽極の白金がコロイドとして少し出たらしい(薄墨色)。 エリオクロム・ブラックT(BT: 水の硬度試験用)を数滴加えると 電解前は 青 なのに比べ、電解後はやや赤みかがっている。もちろん Ca などは発生していないと思われる。
  ・ 陰極の色は 褐色がかなり濃くなったので、水素化物はできていると考えられる。


  (結論)

  この程度の条件では、新たな放射線の発生はほとんど検出されず、常温核融合とはなっていないようである。ただし、電解液の温度上昇は、加えた電力よりも多いのではないかと思われる。

    ∴ 今後は、より極端な条件で、より正確な実験を続けていきたいと思う。




  3. DDS周波数測定器による、チタン棒電解の 周波数特性の測定:


  前節で実験した 1N K2CO3 水溶液を、使用済みで水素化物が陰極にできたチタン棒(φ10mm、浸漬長 10mm)と、白金メッキ・チタン棒(φ10mm)との間で、DDS周波数特性測定器で、出力約4.5Vp-p (交流)の条件で 10Hz 〜 10MHzの正弦波で掃引して測定した。((注) この測定器では5MHz以上では配線等の影響が多少出るが、鋭いピークになることは無い)

  電極の条件は、この条件に対し、
  抵抗=∞(出力、入力 それぞれ短絡)、 セメント抵抗 10Ω10W、 水素化物チタン棒(元の陰極)のかわりにカーボン棒、新品のチタン棒
の4つで比較した。

 

  cf.
 
 


  (結果)

  周波数特性の測定結果は、水素化物が付着したチタン棒、および、新品のチタン棒では、2.1M〜2.2MHzの所で、非常に鋭いピークが見られた。 これは、他の3つの比較実験では現れないものだった。(5MHz以下なので、配線等の共振とは考えられない。)
  他の周波数では、著しい変化は見られなかった

  なぜ、この周波数で あたかも共振するかのようなピーク(=膜の抵抗値が0に近づく)が出るのか不思議である。何らかの電気2重層として 大きなコンデンサーになり、全体として LC共振の作用をするのかもしれない。

  さらに、電極に、L(0.5、22、100μH)、C(220p、1000p、0.01μF)を直結して、周波数特性を測定しても、他の周波数には目立った共振点が現れなかったので、何らかの膜がコンデンサーとして作用、あるいは、測定器のインダクタンスが原因になっているとは考えにくい。
  また、時間の経過と共に、上記の共振点が(2週間くらい放置して、)6MHzまで移動していった。


  ● (追記) その後の追加実験として、パワートランジスター(2SC5200、max230V・15A、=30MHz)による、高周波(2M〜6MHz)での電解実験を行った。(図のb点で、1VDCに 1.5Vp−pのHFが重畳、電解の平均電流は約1A、デューティー比65%(a点)、・・・ 2Aに上げるとHF成分は消えてDCのみになる)
  結果は、この範囲の周波数による変化(電流値、放射能、温度上昇)は、特に大きな特異点などは無かった

                ・・・・・ DDSによる特異周波数は何だったのだろう? 謎を残す結果である。

  




  4. ヒーター加熱との比較:


  1NK2CO3水溶液の 温度上昇(初期18℃)を、チタン棒電解と ニクロム電熱線によって比較した。(by. 前述の トライアック電源、ピーク 30〜40V)

  

  (結果)

  ・ チタン棒電解: 約15W ・・・ 8.5V(平均)×1.8A(平均)、 電解液 ・・・ 200ml、 うなり音発生

時間(分)   5  10  15  20  25  30
温度(℃)  41  61  75  85  90  93


  ・ 電熱線加熱: 約15W ・・・ 10.6V(平均)×1.4A(平均)、 電解液 ・・・ 200ml

時間(分)   5  10  15  20  25  30
温度(℃)  34  50  70  83  91  94(沸騰)


  結果より、ほとんど同じ印加電力(15W)で、温度上昇速度もまた ほとんど同じだった。 チタン棒の陰極から熱が若干逃げるが、この効果を入れても それほど極端にチタン棒のほうが発熱しているとは言えないものだった。(少しは余分に発熱しているかもしれない。)




  §  常温核融合の実際:


  パラジウム・ロッドを用いた電解は良く知られていますが、チタン棒はあまり聞いたことがありません。(チタンも水素吸蔵能力が高いが、濃度が少しでも上がると水素化物になりやすい。パラジウムは金属状態を保持。)
  海外で成功している報告は、極端な条件ばかりです。(イスラエル・・・2つの超音波による衝撃波、など)

  国内では、阪大の荒田名誉教授の研究(2009年5月発表)が有名です。 → 常温核融合の技術開発の展望
  主反応は、
                +   →  He

と考えられ、γ線発生による温度上昇と、ヘリウムの発生が認められました。γ線は低エネルギーなのでステンレス容器の外からは検出されませんでした。
  (* 上記の実験 2. でも、V(平均)×I(平均) = 7.5(V)×2(A) = 15(W)程度に過ぎず、一方、液温が 90℃以上にもなっているので、γ線による発熱の可能性もある??)
  触媒の劣化や 圧力釜での反応のため操作性が悪い などの問題点がありますが、長期的に見て開発を行っていく価値があると思われます。

  この、意外と簡単に、高い核力ポテンシャルの壁を乗り越えられるメカニズムは、従来の量子力学からすると考えられないことです。 佐野博士(セントクレメンツ大)の言うように、100年前からの量子力学の仮説のうちの エーテル否定が覆され、エーテル原理が復活するかもしれません。



    「やみが大いなる水の上にあり、神の霊は水の上を舞いかけていた。」(創世記1:2)



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